フランシス・フェイをご存じか

ジャズという括りに入れてよいかどうか微妙な立ち位置の人ですが、Bethlehemから出ているCDで知ったものですからこのカテゴリーで。

フランシス・フェイ、正確には高級クラブで活躍するエンターティナー。ピアノを弾き歌を歌う、コメディアンヌの要素もある、そんな人のようです。写真を見ると赤く濃い化粧をしているよう。ちょっと怖い。怖いが、歌はうまい。

「I'm  Wild  Again」(▲)。このジャケットデザインはバート・ゴールドブラット。50年代から60年代に多くのジャズのジャケットを手がけている。イラストならルーレットのバド・パウエル、写真ならベツレヘムのクリス・コナーなんかが代表作ですね。ブルーノートのポール・ベーコンやクレフやノーグランで活躍したデヴィッド・ストーン・マーチンらに並ぶ人です。

さて、肝心の中身ですが、中音域の少し男性的な声質、どことなく投げやり(?)に、「はいはい、そこの御仁、連れの女を口説いてばかりいないで、たまには歌をお聞き。ここからいいところなんだから」と周囲を見渡しながら歌っている呼吸でCD1枚分歌いきります。

白眉は7曲目の「九月の雨」かな。声の張り方が独特なんだろうな、音節の頭に張りがあってそれで客の心を掴むような歌い方、とでも言えばいいか。クラブで歌っている景色が見えるようです。

やっぱりジャズの枠に入れない方がいいですね。そうそうサミー・デイヴィスJr.のライブ盤を聞いているみたい。エンターテイメントの1枚。たまにはいいものです。