久しぶりにフランス文学でも読んでみようか、と

本棚に並んだ分厚い単行本の列からゾラを引き出した。藤原書店のゾラ・セレクション中の「ボヌール・デ・ダム百貨店」だ。ずいぶん前に買ったのだが、買ったときにはすでに自分の中のフランス文学熱がずいぶん下がってきていたころだったので、結局は棚に置かれたままになってしまった。もう数年になる。同じような運命の本がやたらに多いのには忸怩たる思いあり。

さてこの「ボヌール・デ・ダム百貨店」、ゾラの著作中、唯一といってもよいハッピーエンドの作品だという。なにせゾラは、暗い、重たい、悲惨である、救いがない。それを自然主義ゆえの特徴だという。時代は現代と呼ばれる直前。自然科学が始まったとはいえ、まだまだ怪しい頃だ。だが流行り始めた「遺伝」なる言葉に乗っかって一連の作品群を物したゾラに迷いはなかった。「暗くて重たくて悲惨で救いのない血統を継いだものの宿命」なのだから、と。そんな世界のたった一つの例外だ。「居酒屋」も「ナナ」も途中断念したけれど、今回はいけるのではないか、と秘かに期待している。上手くいけば同じ棚に並んだままのバルザックの諸作も制覇出来るかも知れない。年内はこの一冊との格闘に専念しようと思う。