今年の本を3冊

今年「読んだ」本です。

まずは名作の誉れ高い「罪と罰」(光文社古典新訳文庫)、今さらながらの一冊です。作者のドストエフスキートルストイの「アンナ・カレーニナ」を評して「芸術として完全である」「ヨーロッパ文学中これに匹敵しうるものはない」と激賞したそうですが、いえいえ(「アンナ・カレーニナ」はいま読んでいる最中での比較になりますが)「罪と罰」の方が完成度が高いと思います。「無駄のない」希有な小説だと思います。

訳はいろいろ問題を指摘されている亀山郁夫氏です。「勝手な意訳が多い」とか。原文を読めないかぎり翻訳に頼らざるを得ないわけで、その訳の良し悪しは必ずついて回る。亀山訳のおかげで面白く読めたのは事実。いつか暇があれば問題のない(と世間が認める)他の文庫を読んでみようかと思っています。

二冊目はアンソニー・ドーアの「すべての見えない光」(ハヤカワepi文庫)です。第二次世界大戦下でのBoy  meets  Girlといえば批難されるかな。盲目のフランス人の少女とドイツ人無線技士の少年との出会いの物語。奇跡のような邂逅をできるかぎり自然に読ませる筆の力に感服しました。この作品、文庫の前は新潮クレスト・ブックスで出たもの。このシリーズはベルンハルト・シュリンクの「朗読者」とかパオロ・コニェッティの「帰れない山」とか読み応えのある作品を多く紹介してくれている。目が離せないシリーズです。

最後は、翻訳もの以外で恩田陸夜のピクニック」(新潮文庫)を。2004年に出ているのでこれも今さらの一冊(どれほど流行りものに疎いかがよくわかります)。読んでいるこちらが少し恥ずかしくなるような青春小説。ぎりぎり読ませたのは作者の抑制の効いたストーリーテリングの手腕のおかげ。この夏、日本の作家さんを固めて読んでみた。※文庫の夏のフェアに乗っかった。それぞれ楽しめたがこの作品が★二つ獲得でここに登場しました。

読書は楽しい。残り時間は限られている。よい出会いが出来るだけ多くありますように、と祈りながら2025年へ。。