サマセット・モームが選んだ「世界の十大小説」(岩波文庫)というものがある。数年前に手にして「なら、読んでみよう」ということで、60代半ばで所謂「世界の名作」といわれるものを読んでみた。文庫で手に入らないフィールディングスの「トム・ジョーンズ」を除いて9作品。
ジェイン・オースティン「高慢と偏見」
チャールズ・ディケンズ「デイヴィッド・コパーフィールド」
エミリー・ブロンテ「嵐が丘」
スタンダール「赤と黒」
バルザック「ゴリオ爺さん」
フローベール「ボヴァリー夫人」
ハーマン・メルヴィル「白鯨」
ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」
トルストイ「戦争と平和」
さて、この話はどこへ向かうかというと、「モームの十大小説を選び直してみよう」というのであります。モームにはモームの考えがあってのチョイス、なにも全て鵜吞みにすることはなく、私なりの10作品を選んでみることにしました。
まず、残すもの。
「ゴリオ爺さん」
「ボヴァリー夫人」
この2作は、この年になって初めて読んだのだが、「面白くて一気に読んだ」という高校生のような読書体験だった。
「白鯨」
子供のころに抜粋版を読んだ経験あり。なので、こんなに鯨百科全書のような作品だとは知らなかった。が、その余分なところが面白くて残留確定。
「戦争と平和」
トルストイは悩んだ。「戦争と平和」か「アンナ・カレーニナ」か。どちらも一長一短あり。悩んだ末に、いまの気分で「戦争と平和」を残そう。
入れ替えは、
「罪と罰」
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」はキリスト教のややこしさに付いていけない、無理。
ここまでは比較的すんなりきました。
イギリス文学は、どうしよう。オースティンもディケンズも読むには読んだが「世界の10作品」に選ぶかというと疑問。なので、没。入れ替え案は悩んだ末にシャーロット・ブロンテの「ジェイン・エア」を。オースティンもディケンズも平易で俗な読み物としての魅力しか感じない。それなら同じ方向性の「ジェイン・エア」を選ぼう。「何を書いているのかわからない」という理由で妹の「嵐が丘」を落した替わりになるし。
フランスからユゴーの「レ・ミゼラブル」。ジャン・ヴァルジャンです。これは少年向けの短縮版では面白みが半減。だらだら続くナポレオン戦争の描写を楽しまねば。「戦争と平和」とセットで読むべし。
「レ・ミゼラブル」のような世俗的楽しみを満喫する作品をアメリカから。マーガレット・ミッチェル「風と共に去りぬ」も10選に入れましょう。映画を観ていたから読み通せたのかも知れないが、あの長さも魅力だ。あの長さの先に「明日、考えよう、タラで」が待っている。
モームが選ばなかったドイツから2作品。トーマス・マンの「魔の山」。読み終えた時は「つまらん」で片づけていたが時間が経つと「これも、ありか・・」に変化。サナトリウムという狭い世界で文字通りのモラトリアムを経験する青年の物語。
もう一作はレマルクの「西部戦線異常なし」です。一人の青年を通して淡々と描かれる戦争。戦場よりも故郷で感じる戦争の狂気。青年の心の揺れ。じんわり来ます。
整理しますと、
「ゴリオ爺さん」
「ボヴァリー夫人」
「レ・ミゼラブル」
「ジェイン・エア」
「罪と罰」
「戦争と平和」
「白鯨」
「風と共に去りぬ」
「魔の山」
「西部戦線異状なし」
こんな感じの2026年10月現在での「世界の十大小説」です。