ドストエフスキー「罪と罰」読了

罪と罰」(亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫)全3巻、やっと読み終えました。ひと月くらいかかったかな。

評価は★★★。最高点。

いま「すごいものを読んだ」と思っています。これほど完成度が高い小説は初めてです。

正直なところ「なぜ殺人を犯したのか」は読後も理解出来ていないし、結局は「キリスト教的な解決(エピローグで語られる『彼は蘇ったのだ』とか『かぎりない愛で贖っていく』など)に委ねるのね」という消化不良感はぬぐえない。

しかし、である。しかし、面白かったのです。まずもって多くの登場人物が際立って魅力的だ。そして彼らを適材適所うまく使っている。決して引っ張りすぎない。皆が皆、パズルのピースよろしくピタリとはまっている。見事な手際だ。

台詞の妙。長広舌が多いがダレない。必要な内容をしっかり押えて長いけど無駄がない。文庫本3冊読んで無駄話がなかったってとんでもない話だ。フローベールバルザックも頭抜けて台詞回しが上手いと思うが、その上をいきますねえ。

これまで「カラマーゾフの兄弟」「白痴」を読んだが、完成度では勝負あり、と思う。前者は3兄弟のキャラクターを立たせすぎてかえって散漫な部分があった。後者は白痴という設定に引っ張られて焦点がぼやけた印象を持った。そうした「面白いんだけどなあ、どうしても気になる」という要素がない。これは凄いことだ。

誉めすぎ、かな。でもまあいいじゃないですか。誉めたいんだから。しばらくは次の小説を手に取らないで、亀山氏の解説(「100分de名著」など)を読んで余韻に浸ろう。落ち着いたら次の一冊を。たぶん「悪霊」になるだろう。